人生100年時代と呼ばれる時代が近づくにつれて、老後のための資産づくりがますます重要になってきました。
日本では、公的年金に加えてつみたてNISAやiDeCoなどといった制度があります。
公的年金だけでは不安な方はこれらの制度を上手に活用して、安心した老後を過ごせるように準備しましょう。
さて、このように、老後に向けた準備が重要になってきており、それを後押しする制度も充実してきていますが、
「海外赴任になったら、年金、つみたてNISA、iDeCoなどはどうなるのだろう」
という疑問をお持ちの方がいらっしゃるかもしれません。
外務省の調査では、2018年の推計で海外に在留する日本人の数は139万人とされています。
今後も、海外で働く人はますます増えるでしょう。
もしかすると、今この記事を読んでいるあなたも、
「近いうちに海外で働くことが決まっている」
「いつか海外で働くことを夢見ている」
と考えているのではないでしょうか。
この記事では、海外赴任を予定している方に向けて、
「海外に出たら、年金、つみたてNISA、iDeCoなどはどうなるのか」
について解説します。
海外赴任や海外居住を予定している方のお役に立つことができれば幸いです。
もくじ
1.海外で働くと年金はどうなるのか
ここでは、海外で働くようになると、年金はどうなるのかについて解説します。
働く人が国を行き来することで、発生しうる問題が2つ挙げられるでしょう。
1つは、海外に派遣された人が、自分の国の年金制度と派遣先の年金制度に対して二重に保険料を支払わなければいけないことです。
もう1つは、海外派遣の期間中だけ派遣先の公的年金に加入した場合、自分の国における公的年金制度の必要加入年数を満たすことができない可能性があることです。
これらの問題を解決するために、社会保障協定というものがあります。
これは、協定を結んだ国の間では、保険料を二重に支払うことがないように、一方の国の年金制度にのみ加入するように調整をかけたり、必要加入年数を満たすことができないことがないように加入期間を通算したりする措置が取られます。
社会保障協定は、以上を踏まえ、
・「保険料の二重負担」を防止するために加入するべき制度を二国間で調整する(二重加入の防止)
・年金受給資格を確保するために、両国の年金制度への加入期間を通算することにより、年金受給のために必要とされる加入期間の要件を満たしやすくする(年金加入期間の通算)
ことを目的として締結しています。
引用:日本年金機構
1-1.日本と社会保障制度を結んでいる国で働く場合
日本と社会保障協定を締結している国は以下の国々です。
- ドイツ
- 英国
- 韓国
- アメリカ
- ベルギー
- フランス
- カナダ
- オーストラリア
- オランダ
- チェコ
- スペイン
- アイルランド
- ブラジル
- スイス
- ハンガリー
- インド
- ルクセンブルク
- フィリピン
- スロバキア
- 中国
また、イタリア、スウェーデン、フィンランドは、署名済み未発行です。
英国、韓国、イタリア、中国は、「保険料の二重負担防止」のみとなっています。
これらの国で働くことになった場合、現地採用なら、その採用される企業がある国の社会保障制度に加入することになります。
また、これらの国に日本企業から派遣されて働く場合、働く期間が5年以内なら日本の社会保障制度に継続して加入することになり、働く期間が5年を超えるなら派遣先の国の社会保険制度にのみ加入することになります。
1-2.日本と社会保障制度を結んでいない国で働く場合
原則として、働く国の社会保障制度に加入することになりますが、日本企業との間に雇用関係が継続しているのであれば、日本の社会保障制度にも継続して加入することになります。
1-3.日本国籍があれば国民年金に任意加入できる
海外に居住する場合、国民年金は強制加入ではなくなります。
(日本に居住している場合、国民年金は強制加入)
ただし、日本国籍があれば、任意加入が可能です。
2.海外で働くとつみたてNISAはどうなるのか
海外で働くことになった場合、つみたてNISAはどうなるのか解説します。
結論から申し上げると、、5年以内の海外転出であれば引き続き利用可能です。
元々は、海外へ赴任する場合はNISA口座を廃止して課税口座にお金を払い出す必要がありましたが、2019年の税制改正によって5年以内の海外転出であれば継続して利用することが可能になったのです。
ただし、継続して利用するためには手続きが必要なので忘れないようにしましょう。
まず、出国する前日までにNISAを開設している金融機関へ「継続適用届出書」を提出しなければいけません。
そして、帰国したら再び金融機関に「帰国届出書」という書類を提出する必要があります。
3.海外で働くとiDeCoはどうなるのか
iDeCoについて解説します。
結論から申し上げると、既に加入している人が海外に住民票を転出すると、新たな積み立てはできなくなってしまいます。
ただし、日本に帰国して再び居住者になれば、また積み立てを再開することができるようになります。
また、海外赴任によって国外に居住するようになっても、勤め先の厚生年金に加入している状態であれば、引き続きiDeCoで積み立てることができます。
4.節税のメリットと海外赴任になる可能性
さて、海外赴任になると、年金、つみたてNISA、iDeCoなどはどうなるのかについて解説しました。
一時的な海外赴任であれば大きく影響を受けることはありませんが、長期にわたって海外赴任をする際は注意が必要です。
これからつみたてNISAやiDeCoへの加入をしている方は、加入によって得られる税制優遇のメリットと、ご自身の人生において海外で働くことになる可能性を天秤にかけて、加入するかどうかの検討をしましょう。