故人がゴルフ会員権を保有していた場合、その相続をどうするのか気になる遺族の方も多いでしょう。
「そもそも税金はかかるのか」
「どのように計算されるのか」
「名義変更はどうすればいいのか」
などの点が気になるかと思います。
この記事では上記のポイントを中心に「ゴルフ会員権の相続」について解説します。
故人のゴルフ会員権の相続税の計算や、名義変更のやり方で悩んでいる方には、きっと役立てていただけるでしょう。
1.ゴルフ会員権の相続にも税金がかかるか
まず多くの人が気にするのは「税金はかかるのか」という点でしょう。
ルールとしてはかかるのですが、実務的には「かからないようにする」方法があります。
ここではその実務も含めて解説します。
1-1.税金はかかる(国税庁が専用ページも作っている)
ゴルフ会員権にも相続税がかかります。
これは、国税庁がわざわざ「ゴルフ会員権の評価」という専用のページまで作っていることでわかります。
1-2.生前贈与にしても「贈与税」がかかる
「相続でなく、生前に贈与した場合はどうか?」と思うかもしれません。
しかし、この場合は「贈与税」がかかります。
これは、先ほどの国税庁のページで「贈与税」について触れていることでもわかります。
1-3.贈与の場合「年間110万円」までは非課税
上のように贈与税もかかるルールですが、「年間110万円」までは非課税となります。
これはゴルフ会員権だけでなく、どんな贈与でも同じです。
この110万円を「基礎控除額」といいます。
この金額の範囲内であれば、納税が不要というだけでなく「申告も不要」なのです。
何もしなくていいわけですね。
1-4.ゴルフ会員権は「110万円以下」が多い
ゴルフ会員権には「取引相場」があり、おおよその金額がわかります。
たとえば2020年1月下旬時点で、「箱根CC」の場合は約60万円です。
つまり、この場合は「生きているうちに贈与してしまえば非課税」となります。
1-5.「他の贈与」も合算されるので注意
この贈与のルールで注意すべき点は「他の贈与も合算して110万円」ということです。
・ゴルフ会員権…60万円
・自動車…200万円
・合計…260万円
このような贈与だったら、110万円を引いた後の「150万円」に課税されます。
2.ゴルフ会員権の相続税評価
税金がかかることがわかったら、次に気になるのは「どう計算するか」でしょう。
ここでは、ゴルフ会員権の相続税評価のルールをまとめます。
2-1.取引相場がある場合:取引価格 × 70%
取引相場があるゴルフ会員権の場合、評価額は下のようになります。
被相続人が亡くなった日時点の取引価格 × 70%
2-2.取引相場がない場合
これは主に3つのパターンがあります。それぞれ分けて説明します。
株主限定の会員権…株式と同じ方法で評価
「株主優待」などのシステムで、株主だけが会員になれるというゴルフクラブもあります。
このようなクラブの会員権の場合「株式と同じ方法」で評価します。
株式はゴルフ会員権以上に相場が変動し、さらに「おまけの優待特典」ということで、価値の計算は複雑になります。
個人での計算は不可能と言っていいため、この場合は相続に強い税理士に相談しましょう。
預託金が必要な会員権…その預託金の額
「〇〇万円預ければ会員になれる」というゴルフクラブもあります。
この場合、退会すればその「〇〇万円」が戻ってくるわけです。
これが相続財産になるので、この金額で評価します。
株主限定かつ預託金が必要な会員権…複合で評価
上の2つの条件が「両方必要」というゴルフ会員権もあります。
この場合は「両方の価値」があるため、複合して計算します。
2-3.預託金が「戻るまでの期間」に応じた計算
預託金がある場合、それが「戻ってくるまでの期間」によって、計算が変わります。
主に2つのケースに分かれるので、それぞれ解説します。
すぐ戻る場合…単純に金額をプラスする
預託金がすぐに戻ってくる場合は、単純にその金額をプラスします。
たとえば取引相場がわかっている場合、下の計算式になります。
死亡時点の取引価格×70%+預託金の金額
すぐに戻らない場合…その分の利息もプラスする
この場合は「クラブにお金を貸している」ことになり、相続税の計算では利息が発生します。
(実際の契約ではどうかわかりませんが、相続税のルールではそうなります)
この計算式は、取引相場がわかっている場合は、下のようになります。
死亡日の取引価格×70%+預託金の金額×複利現価率
最後の「複利原価率」ですが、正確には「返還までの期間に応じた基準年利率による複利原価率」となります。
複雑な用語ですが、要は「複利計算される」と考えてください。
(利息にも利息がかかるということです)
3.ゴルフ会員権の名義変更
ゴルフ会員権を相続するなら、不動産と同じく「名義変更」が必要になります。
ここではそのやり方の概要を説明します。
3-1.クラブによっては審査が必要
ゴルフクラブは、ステータスの高いところでは「厳選した会員」のみを集めています。
そのため「相続したから」という理由では入れないこともあります。
その場合は、故人が受けたのと同じ審査を受け、パスしたら名義変更が認められます。
3-2.名義書換料がかかるかはクラブによる
名義変更をするときに料金がかかるかは、クラブによります。
すでに「故人の加入時にもらっているので不要」というクラブも多いものです。
逆に、加入の段階で「余計なコストを負担させなくて済むように」と、徴収していないクラブもあります。
(実際、名義変更をしなければ不要なお金ですから、徴収されない方がいいでしょう)
その場合は、新規に名義書換料を徴収されることもあります。
3-3.最低限の手数料は必ずかかる
ゴルフクラブの名義書換料とは、10万円~100万円が相場です。
小金井CCなど、高いところでは1500万円を超えた事例もあります(2014年)。
上の段落で書いたのは「これが不要になる」というだけです。
書き換えの事務手数料(数千円など)は確実にかかるため、これは理解しておいてください。
4.まとめ
ゴルフ会員権は立派な資産の一つであり、不動産や自動車などと同じく、正しく手続きをする必要があります。
価値の評価などが難しい点も多いため、基本的に税理士などの専門家に相談して、手続きを進めるのがいいでしょう。