相続財産の評価・調査のルールは?動産・不動産・債権・マイナス財産の全てで解説!

相続

相続財産の調査・評価方法が知りたい

相続財産には多くの種類があります。

その種類ごとに「どのように評価・調査されるのか」というのは、多くの人が気になるところでしょう。

この記事では、あらゆる種類の相続財産について、その評価と調査の方法を解説します。

一般的な財産を相続する人から、マイナーな財産を相続する人まで、多くの人に役立てていただけるでしょう。

1.動産について

動産とは「不動産以外のすべての財産」です。

相続では現預金自動車家財道具株式などが該当します。

動産の種類はバラエティ豊かですが、評価のルールはほぼ全て共通するものです。

ここでは、その評価のルールを解説します。

1-1.評価の単位

原則1個ごと、1組ごとに評価します。

例えばその動産が「暖房装置」であれば、同じ製品が複数あっても、1つずつ評価するということです。

1つずつ評価する理由は、違う時期に買っていれば「残りの耐用年数」が異なるためです。

同じ時期に買った場合は「同じ評価額」になることが多いですが、それでも「1つずつ評価する理由」は納得できるでしょう。

参考

1-2.評価の方法

主に下の2つ価格を参考に評価します。

動産の評価方法
  1. 売買実例価額:実際に市場で売買されている価格
  2. 精通者意見価格:その分野に詳しい人物の意見による価格

このどちらも不明という場合は「似たような動産」から割り出します。

具体的には「同じ種類の製品」で「同程度のサイズ」などの条件で決めます。

1-3.評価額の計算方法

動産の評価額は、購入してからの経過年数によって変わります。

「減価償却」をして、残っている価値の分だけが評価額となります。

このときの減価償却のやり方は、不動産などと同じです。

評価額の計算方法
  1. まず耐用年数を調べる
  2. その耐用年数での「減価償却率」を調べる
  3. その率 × 年数で、価値を割り引く(減価償却)
  4. 残った価値(評価額)に課税する

というやり方です。耐用年数ごとの減価償却率は、税理士法人などのサイトでまとめられています。

2.不動産について

不動産は「土地」と「建物」に分かれます。

そして、土地の評価方法は「路線価方式」と「倍率方式」の2通りです。

また、建物は「故人が建物をどう使っていたか」により、計算方法が変わります。

ここでは、それぞれの評価・調査の方法を解説します。

2-1.路線価方式

路線価方式は簡単にいうと「路線価 × 面積」で計算するものです。

面積登記簿に書かれている数値そのままです。

路線価国税庁のサイトでわかります。

路線価図・評価倍率表」というページです。

リンク先に地図があるので、ここから自分の「都道府県→市区町村→番地」と絞り込んでいきます。

例えば「東京都・新宿区・信濃町・21033」の路線価図は以下のリンクから見ることができます。

東京都・新宿区・信濃町・21033

(21033という番地はありませんが、複数の番地を集めた路線価図の独自ナンバーです)

この路線価図を見れば自分の土地の路線価がわかるのです。

路線価図は「1㎡あたりの値段」なので、あとは面積をかけるだけです。

つまり路線価を確認することが全てであり、計算方法自体は簡単といえます。

MEMO
  • 路線価方式は、路線価 × 面積
  • 路線価は国税庁HPから調べる
  • 面積は登記簿から調べる

2-2.倍率方式

これは「固定資産税の評価額に、決められた倍率をかける」ものです。

固定資産税の評価額は、不動産のある地域の役所でわかります。

役所まで行かなくても、毎年の固定資産税の通知などでもわかるものです。

倍率は、正式には「評価倍率」といいます。

これも国税庁の「評価倍率表」に書かれています。

ここで、自分の都道府県をクリックします。

例えば「福岡県」の場合、下のページになります。

福岡県 財産評価基準書目次

目次を見ると、路線価図の下に「評価倍率表」という欄があるのがわかるでしょう。

・一般の土地等用
・大規模工場用地用
・ゴルフ場用地等用

という3つのメニューがあります。

ほとんどの相続不動産は「一般の土地」なので、これをクリックします。

すると「市区町村」の一覧が出てくるので、やはり不動産のある場所を選びます。

例えば「福岡市・吉富町」だったら下の倍率表が出ます。

福岡市・吉富町の倍率表

宅地の欄であれば「1.2」「1.0」などの倍率が書かれているのがわかるでしょう。
また、田畑であれば「2.3」「5.5」などの数字が見えるかと思います。

これを固定資産税の評価額にそのまま掛けるのです。

宅地の場合「1」に近い倍率が多いため「あまり変わらない」といえます。

逆に田畑は倍率が高いため「評価額より高くなることが多い」ものです。
これは、元の評価額が安いためです。

「売ったり相続したりするなら高めに課税するが、普段はあまり課税しない」ということです。

倍率方式は主に「田舎の宅地」や「田畑・山林・原野」などに適用されます。
理由は「これらの評価は簡単でいい」ためです。

さほど高額な財産でない
「だから路線価方式ほど厳密にしなくていい」
ということです。

「それでいいのか?」と思うかもしれませんが、あまり厳密にやると「公務員の仕事が増えてしまう」のです。
適度に省力化する方が社会のためになるので、このような土地は「簡単な倍率方式になる」のです。

※ちなみに、福岡市でいうと、中央区大名のような「都市部」は、倍率方式がほぼ適用されません。そのため、倍率表を見ても「ほぼ何も書かれていない状態」です。

福岡市・中央区倍率表

MEMO
  • 倍率方式は、固定資産税の評価額 × 倍率
  • 倍率は国税庁HPから調べる
  • 固定資産税の評価額は役所で調べる(または固定資産税の通知)

2-3.建物の評価

建物の評価額は、その建物を「故人がどう使っていたか」で、計算方法が変わります。

具体的には下の2通りです。

評価額の計算方法
  1. 自分で使っていた…固定資産税評価額 × 1
  2. 人に貸していた…固定資産税評価額 ×(1 – 借家権割合)

まず、自分で使っていた場合は、建物の固定資産税の評価額がそのまま使われます。
「100%相続できた」ので、特に細かい計算をする必要がありません。

一方、人に貸していた場合、その建物は「100%相続できた」とはいえません。
「借り手の権利の割合=借家権割合」は、相続できていないわけです。

そのため、その割合は差し引かれます(課税されません)。
それが「1 – 借家権割合」の意味です。

さらに「複数の借り手がいる」賃貸アパートやマンションの場合、下のような計算式になります。

固定資産税評価額 ×(1 – 借家権割合 × 賃貸割合)

追加されたのは、最後の「賃貸割合」です。

これは「入居率」のことです。

まったく入居していないなら、誰にも「アパートを使う権利」を占有されていません。
そのため「アパートを100%相続できた」ということになります。

このように「賃貸割合=入居率」が権利に関わるので、計算式に含まれるわけです。

3.債権・その他について

相続財産のほとんどは「動産・不動産」のどちらかです。

しかし、どちらにも含まれない「債権」などの財産もあります。

ここではそれらの相続財産の調査と評価について解説していきます。

3-1.「回収できる債権」の評価・調査

回収できる債権は財産として評価されます。

例えば「貸している現金」であれば、下の2つの合計が評価額となります。

・貸している金額
・受け取る予定の利息

例えば100万円を貸していて、最終的に5万円の利息をもらえる予定なら「105万円」という評価額になります。

ただ「それほど単純でない」ことは誰でも想像できるでしょう。

債権は「回収不能になるリスク」があります。

そのため、そのリスクに応じて「一定の割引」があります。

例えば消費者金融の融資で「5%の割合で貸し倒れが起きる」としましょう。

その場合「総額から5%を割り引く」という方法で計算します。

(単純化した説明ですが、原理は概ねこの通りです)

調査については上のような回収可能性と「債権は本当にそれだけか」などの点が調べられます。

債権は不動産などと違って「隠しやすい」ため、故人が多くの債権を持っていた場合は調査も厳しくなるでしょう。

3-2.「回収できない債権」の評価・調査

評価については「本当に回収不能」であれば、「損金」と同じ扱いになります。

つまり、課税対象額から引いていいわけです。

ただ、これは悪用すれば「相続税の脱税ができてしまう」ものです。

そのため「本当に回収不能なのか」が、厳しく調査されます。

具体的には、相手(お金を借りている人・会社)について、下のようなことを調べます。

調べること
  • 赤字の金額
  • 赤字の継続期間
  • 銀行などからの借入状況

これらを総合的に見て「多分本当だろう」と税務署が判断したら「回収不能な債権」と認められます。
そして、相続税を軽減できるということです。

(この件に限らず、税に関する評価や調査は完璧にはできないため、多少曖昧な部分が残ることが多いものです)

3-3.知的財産権

知的財産権のような「無体物」は、動産でも不動産でもありません。

そのため「無体財産」に含まれます。

例えば「彫刻作品」は動産ですが、その写真を使う権利などの「著作権」については、動産ではないということです(もちろん不動産でもありません)。

知的財産権とは、具体的には下のようなものです。

知的財産権
  • 著作権
  • 特許権
  • 商標権
  • 実用新案権
  • 意匠権

これらはいずれも相続税の課税対象になります。

価値については、それぞれの計算方法が定められています。

例えば、著作権は下の計算式で算出します。

年平均印税収入の額 × 0.5 × 評価倍率

3-4.無体財産権

無体財産権とは「非有体物を支配する権利」です。

上の「知的財産権」は無体財産権の代表的なものです。

他の無体財産権は、国税庁が正式に規定するものでは、以下のものがあります。

無体財産権
  • 育成者権
  • 回路配置利用権
  • 商号

育成者権と回路配置利用権は、どちらも知的財産権の一種です。

育成者権は「種苗法上の特定の品種に関する権利」で、わかりやすくいうと「品種改良に関する著作権」です。

回路配置利用権も「その回路配置を考えた人に与えられる著作権」です。

商号は、例えば「江戸時代から続く屋号」などは、財産としての価値があります。

それが法人名や商標などとして登記されていなくても、価値があるものです。

例えば、代々襲名される歌舞伎役者の名前などに、大きな価値があることは明確でしょう。

「その価値がいくらのものか」という算出は非常に難しいのですが、国税庁が正式に「無体財産」と認識していることは確かです。

参考

3-5.営業権

営業権(営業上の権利)も、相続税評価に含まれます。

ただし、営業権は法律で明確に規定されている権利ではありません。

例えば「のれん分け」の権利については、その商号が「商標権」になっていれば、商標権の類似ケースから、計算しやすくなります。

しかし、商標登録をしておらず「単純に信用で分けているだけ」だと、計算が難しくなるわけです。

最終的には「その分野の有識者」などを交えて、「実態に応じた価値」を判断します。

もちろん「そこまでするほどの価値がない」場合は、相続税調査でも「スルー」されるか「大雑把な概算」になります。

(その計算が不服であれば申し出ることもできますが、少額のはずなので、そこまでするケースは少ないでしょう)

4.マイナス財産について

マイナス財産は、専門用語では「負債」で、わかりやすくいうと「借金」です。

専門用語でマイナス財産を一覧にすると、下のようになります。

マイナス財産一覧
  • 借入金
  • 未払金
  • 公租公課
  • 保証債務
  • 敷金
  • 葬式費用

借入金は「借金」、未払金は「まだ払っていないお金」です。

公租公課は「税金の滞納」、保証債務は「保証人になってしまった借金」です(連帯債務ともいいます)。

敷金は「自分が大家側」のときのマイナス財産です。

親が大家で、入居者から敷金を預かっていたら、退去時に返さなければいけないためです。
(自分が借りる側なら敷金は「戻ってくる」のでプラス財産です)

葬式費用はそのままですが「負債なのか?」と思うでしょう。

特殊なケースを除けば「普通はそのときに全額支払う」ためです。

借金にはならないわけですね。

それでも負債として計算できるのは「故人のために支払うことになったお金」だからです(わかりやすくいうと)。

専門的に書けば「相続開始に伴う必然的な支出」なので、これは相続税の評価額からマイナスできるのです。

5.まとめ

相続財産の評価や調査は、基本的に「一般常識の範囲内で行われる」と考えてください。

計算のルールなどは、多少難しい部分もあります。

しかし、意味がわかると「確かに妥当である」と感じられるものがほとんどです。

これは「突飛な課税がされることはない」ということです。

そのため、常識的に財産を管理して引き継いできた家系であれば、特に大きな問題は起きないといえるでしょう。

ただ、実際の細かい実務は一般の方ではわからない部分が多いはずです。

そのため、相続税の評価や調査については、税理士などの専門家に依頼することをおすすめします。

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