「その年に数回会う親が一人暮らしをしていて心配」という方が多いと思います。
この記事では
「もし、その大事な親に認知症の疑いが出た場合、どのようなリスクがあるのか」
「認知症が発症してしまった場合、その対策をどうすれば良いのか」
という疑問や不安をお持ちの方に向けて一人暮らしの親が認知症になった場合のリスクや対応策について解説します。
もくじ
1.認知症の現状
現状として、日本では一人暮らしの高齢者数が年々増加しています。
例えば、内閣府「高齢者の経済・生活環境に関する調査結果」によると、1980年には、65歳以上の一人暮らしの方の人口は87万人だったのに対し、2010年にはその数が480万となり、20205年には700万人に膨れ上がるという推定がなされています。
また、高齢者の一人暮らしの中で最も比率が高くなるのは、配偶者と死別してしまった75歳以上の女性となります。
一人暮らしの高齢者の現状だけでなく、認知症の現状についても確認しましょう。厚生労働省「都市部の高齢化対策の現状」によると、認知症になってしまう高齢者の数も年々増加すると推定されています。
例えば、2010年度の調査では、認知症高齢者数は280万人となっており、2025年には400万人になると推定されています。
自分の親が認知症になってしまう。そのようなことも、もう他人事では無い時代になってきています。
2.一人暮らしの親が認知症になることで生じるリスク
一人暮らしの高齢者が認知症にかかる可能性が年々増加している事実をご紹介しましたが、それでは一人暮らしの高齢者が認知症になってしまうことには、どのようなリスクが生じるのでしょうか?
認知症が引き起こす問題・トラブルについて、確認していきましょう。
2-1.火の不始末
まず、一番心配しなければならないことは、生命に関わるリスクについて理解することです。
認知症の状態が比較的軽度のうちから、生命を脅かすリスクが大きいことは、火の不始末です。
コンロの火をつけたまま忘れてしまう、ストーブの火をつけたまま忘れてしまう、など、火を使っていることを忘れてしまいそのまま外出してしまう、といったは非常に大きなリスクとなります。
2-2.外出時に事故・行方不明
認知症が進行している状態で外出してしまうと、道に迷ってしまうというリスクが避けられません。
どの道を行けば、家に帰ることが出来るのか?
そのような状況で外出すると、家に帰られず、夏は熱中症、冬には最悪、凍死してしまうなど、生命に関わるリスクが生じてしまいます。
また、信号機を理解出来ず、交通事故を起こしてしまう。踏切をうまく渡れないなどのリスクも考えられます。
2-3.食生活のバランスが崩れてしまう
食事は言うまでもなく健康作りの大きな要因の1つですが、そのバランスが崩れる可能性があります。
そもそも、食べたこと自体を忘れてしまい、もう一度食事をとってしまうなどの過食のリスク、何を食べたかを覚えていないため、同じものを何度も食べてしまい、栄養バランスが崩れるリスクなどが考えられます。
そのような食生活を送っている場合、大事な健康を害してしまい、生活習慣病になったり、認知症を悪化するサイクルが早くなってしまうなどの可能性が高くなります。
2-4.近隣住民とのトラブル
地域の約束事が守れなくなり、近隣住人とトラブルを招くといった可能性も考えられます。
例えば、ごみ出しのルールを守れなくなったり、そのルールを理解出来ていないまま、相手が悪いと認識し大声を出してしまったりといったリスクが考えられます。
マンションなど、共同生活者が居住する形態の場合、最悪のケースとして、その住居を追い出されてしまう可能性もあります。
2-5.生活面のリスク
生活面でのリスクで言えば、一番大きな問題はお手洗いに関するリスクです。
認知症により、尿意を認識出来ず、お漏らししてしまったり、便秘を理解しないと、ずっと排泄しないまま過ごしてしまうなどのリスクが考えられます。
そのような場合、第一に考えられるのは不潔ですし、そのような環境な中、生活を続けるのは健康面でも大きなリスクがあります。
例えば、便秘を解消しないまま、その状況を放置すると、最悪、腸閉塞などの大きな病気につながるリスクがあります。
2-6.金銭管理面のリスク
認知症が進行すると、何にお金を使ったのか認識していない、という状況も考えられます。
さっき買ったばかりのものを、購入していないと勘違いし、また同じものを買ってしまう、最悪の場合、高額な商品を理解しないまま購入してしまったり、詐欺にあってしまうなどのリスクが生じます。
また、賃貸で生活している場合、家賃を滞納してしまう、賃貸で無い場合においても、生活インフラである、水道・ガス・電気料金を滞納し生活がままならなくなるなどのリスクも大きなリスクとなります。
上記のように、認知症になることのリスクは生命を脅かすものから、生活環境を壊す可能性のあることまで非常に多岐に亘ります。
3.一人暮らしの親が認知症になった場合の対策について
高齢者の認知症によるリスクを確認したところで、次に確認したい点は、認知症となってしまった時に、どのような対策を取ることが出来るのか?という点です。
それには次のような方法が考えられます。
3-1.頻繁に親に連絡を取る
上記のような認知症トラブルを事が大きくなる前に回避するためには、そのような状況になる前に対策を取るしかありません。
そのため頻繁に親と連絡を取ることが重要です。
連絡を取った際は、親の生活の状況をいろいろと確認してください。
あまり、認知症を心配しすぎると、親も警戒してしまうため、あくまで自然な感じで話をしながら、一人暮らしの状況を把握するように努めましょう。
3-2.実家に帰省する頻度を上げる
親と電話で話す機会を増やすというのも、もちろん有効な手段ではありますが、実家に帰省する頻度を上げることも重要です。
その際には、親と会話することはもちろん、実家の様子も確認しましょう。
例えば、部屋はキチンと掃除されているか、高額そうな商品が家に増えていないか、冷蔵庫の中身が同じものが溢れていないかなど、認知症になることで、起こりうるリスクについて、何かその兆候が出ていないかを中心に確認してください。
なお、このように本人と会話したり、実家に帰省する場合、あまりに直接的に確認を行うと、親に警戒されてしまい、本当のことを話してくれなかったり、事実を確認しきれなかったりするような状況もあります。
そのため、あまり親には否定するようなことを使わずに、「最近ニュースでこういう話が話題になっている」「会社の先輩の親がこのような状況になったと話を聞いたんだが、お母さんならどうする?」など、さりげなく本人の状況を確認するようにしましょう。
3-3.実際に症状として表れている状況から対応する
親と話をする、あるいは、実家の様子を確認する中で、認知症のリスクを感じた場合、喫緊の課題となっている問題から対処することが重要です。
例えば、火の管理が危ないと感じたのならば、ガスを使う調理器具から、IHに変更し、火を使わないようにする、ということが考えられます。
その際は、親には否定的なことを言わず、「今はこういう調理器具が便利らしいよ」などと肯定的な理由を付けて、親の意思を確認した上で、交換していくようにしましょう。
3-4.近隣住民とのつながりを作る
認知症の対策として、日常的な近所づきあいも重要です。
実家にずっと住み続けている親であるならば、近所付き合いも豊富だと思います。
また、長年の付き合いがあるからこそ、日常的なやりとりをする中で異変に気づき、好意的に心配してくれているかも知れません。
実家に帰った際などは、近所の方にも声をかけるなどしてみましょう。
3-5.認知症に備えた体制作りを行う
一方で、必ずしも、近所付き合いを頻繁に行っていない親も居ると思います。
そのような場合は、最寄の支援センターなどに相談し、民生委員さんなどによる見守りの手段について相談しましょう。
基本的に健康であり、生活に大きな支障が無い場合は、近所の方に見守りを依頼したり、見守り隊などにより、何かトラブルが起こっていないか、見守っていただく体制を整えることを進めましょう。
3-6.生活の見直しや見守り体制では限界がある場合
実態として備えうるリスクにも備え、近隣の方や地域の方にご協力いただき体制を整えたとしても、問題が生じるほどに認知症が進行してしまった場合は、親の生命や尊厳を守るという意味も含めて、一人暮らしを諦め、介護施設に入所してもらうことになります。
本人は入所することを嫌がるかもしれませんが、本当に大きなトラブルになり、取り返しのつかないことになってからでは意味がありません。現状の体制で限界を迎える前に、早めの入所を進めましょう。
その際は、ショートステイ型のサービスを利用し、一人暮らし以外の生活に慣れてもらいながら、徐々に入居型のサービスに移行するなど、本人の負担がなるべく少なくなるような移行を行うことが重要になります。
4.まとめ
現在の日本では一人暮らしの高齢者が増え、自分の親が認知症になることは十分に考えられる状況です。
また、認知症を発症することのリスクは非常に大きいものになります。
しかしながら、そのような状況だからこそ、親の生活に関心を持つきっかけにもなります。
自分の親には健康に自分の人生を全うして欲しいものですよね。
この記事により、読者様の家族のコミュニケーションが生まれ、皆さまの明るい未来づくりのきっかけになれば嬉しく思います。